屋根裏のクマネズミが電線をかじる理由
「ガリガリ音」と電気火災のリスク
夜になると屋根裏から聞こえてくる「ガリガリ」「カサカサ」という音。 単なる騒音だと思われがちですが、クマネズミが電気配線をかじっている場合、被覆の損傷や短絡を通じて火災につながるおそれがあります。 見えない場所で進行するため、住んでいる人が気づきにくいのが厄介な点です。
クマネズミはなぜ電線をかじるのか
前歯が一生伸び続けるため
ネズミを含むげっ歯類の前歯は、生涯にわたって伸び続けます。 食べ物や物をかじることで歯先が摩耗し、使いやすい長さと形が保たれています。
これは「歯を削らなければ危険だ」とネズミが考えて行う意識的な行動ではありません。かじることに適した歯の構造と、生まれつき備わった行動特性によるものです。
屋根裏には、かじれる物が多い
屋根裏には木材、断熱材、樹脂製品、電気ケーブルなど、ネズミが接触できる物が数多くあります。 その中に電線があれば、食べ物ではなくてもかじられる可能性があります。
「電線の樹脂が特別に好物」というより、通り道や巣の周辺にある物が、かじる対象になり得ると考えるのが適切です。
電線をかじられると、なぜ火災につながるのか

被覆が破れ、中の導体が露出した状態のイメージ
家庭用の電線は、電気を通す導体を絶縁性の被覆で覆っています。 この被覆を繰り返しかじられると、中の導体が露出したり、一部が切れたりすることがあります。
1. 被覆が破れて導体が露出する
外側の被覆には、電気が本来の経路以外へ流れるのを防ぐ役割があります。 被覆が傷つくと、その絶縁性能が失われます。
2. 短絡や半断線が起こる
露出した導体同士が接触すると、短絡(ショート)が起こる可能性があります。 また導体が完全には切れず一部だけ残る「半断線」では、 残った細い部分に電流が集中して発熱する場合があります。
東京消防庁は、コードが踏まれたり挟まれたりして被覆が損傷し、短絡して火災に至った事例を公表し、 「コードの被覆に損傷が認められる場合は、使用をやめてください」と呼びかけています。 損傷の原因が家具かネズミかは違っても、被覆が破れれば同じ経路をたどるという点は変わりません。
3. 周囲へ燃え広がるおそれがある
短絡時の火花や局所的な発熱が、周囲のほこりや可燃物に及ぶと出火につながるおそれがあります。 特に屋根裏は普段目に触れない場所です。小さな異常を早期に発見しにくい点も、注意が必要な理由です。
ネズミが電源コードをかじって出火した実例
ネズミによる電気火災は、想像上の話ではありません。
NITE(製品評価技術基盤機構)は、平成24年度から28年度までの5年間に収集した製品事故のうち、 ペットや小動物・害虫が関与した事故を集計しています。
製品事故(5年間)
もの
(56件)
出典:NITE「身近な動物が思わぬ火災事故を引き起こします」(平成29年8月24日公表)
公表された事故事例には、次のものが含まれています。
ネズミが冷蔵庫の電源コードをかじり、断線させたことでショートし、火災が発生した。 (平成28年7月、徳島県)
NITEは、小動物や害虫が製品内部に侵入して基板に接触したり、 内部配線をかじってショートさせる事故が起きていること、製品の外観からは分かりにくいことを指摘し、 動作不良が生じた際は点検を受けるよう求めています。
誤解のないようにお伝えします。すべての屋根裏の物音が電線被害を意味するわけではありません。 また、電線をかじられたら必ず火災になるわけでもありません。重要なのは、可能性を決めつけず、兆候があれば早めに確認することです。
電気火災以外に起こり得る被害
断熱材の損傷
クマネズミが断熱材の中を移動したり、巣材として利用したりすると、 断熱材が押しつぶされたり、ちぎられたりすることがあります。 損傷の範囲によっては、断熱性能の低下につながります。
糞尿による汚染
屋根裏に住み着くと、糞や尿、体毛がたまります。 天井や断熱材にシミや臭いが残り、清掃や交換が必要になる場合があります。 ネズミは、その排泄物などを介して人に感染しうる病原体を持つことがあるため、素手で触れないでください。
夜間騒音による生活への影響
クマネズミは夜間に活動することが多く、天井の上を走る音や物をかじる音が睡眠を妨げることがあります。 音が続くこと自体が、精神的な負担や生活の質の低下につながりかねません。
見逃したくない4つの兆候
次のような変化がある場合は、屋根裏の生息状況と電気設備を確認する必要があります。
- 天井裏から「ガリガリ」「カサカサ」という音がする
- 照明がちらつく、またはブレーカーが繰り返し落ちる
- 焦げたような臭い、樹脂が焼けたような臭いがする
- 天井に新しいシミが現れた、または動物臭がする
照明のちらつきやブレーカーの作動には、ネズミ以外の原因もあります。自分で原因を決めつけず、電気設備は電気工事の専門家へ確認を依頼してください。
異常を感じたときの対処方法
煙や焦げ臭さがある場合
火災が疑われる場合は、屋根裏へ入ったり、損傷した配線に触れたりしないでください。安全な場所へ避難し、119番へ通報してください。
電気の異常がある場合
照明のちらつきやブレーカーの作動が続く場合は、異常のある回路や電気製品の使用を中止し、 電気工事の専門家へ点検を依頼してください。 危険を感じる状態で、屋根裏の配線を自分で触ることは避けてください。
物音だけの場合
火災の兆候がなくても、物音が続くなら生息調査を行います。
- クマネズミの追い出しや捕獲
- 糞尿や巣材の除去、清掃
- 損傷した断熱材や配線の確認
- 建物外周と屋根まわりの侵入口の特定
- 侵入口の封鎖と再侵入防止
毒餌だけでは、侵入口も損傷した配線も直りません。ネズミへの対処と、建物・電気設備の点検を分けずに行うことが大切です。
自分で屋根裏へ入る前に
屋根裏には、踏み抜き、転落、粉じん、糞尿への接触、感電などの危険があります。 足場や配線の状態が分からないまま入るのは避けてください。
また、防鼠テープや保護材は、場所と施工方法が適切でなければ十分な効果を得られません。 目に見える電線だけを保護しても、侵入口が残っていれば被害が別の場所で続く可能性があります。
よくある質問
ブレーカーがあるなら、火災は防げませんか?
ブレーカーは重要な安全装置ですが、設置されているから被覆の損傷を放置してよい、ということにはなりません。配線に異常が疑われる場合は、電気工事の専門家による点検が必要です。
屋根裏で音がしたら、すぐ火災になりますか?
音だけで火災が迫っているとは判断できません。木材や断熱材を移動する音の場合もあります。ただし電線をかじっている可能性を完全には除外できないため、音が続くようなら調査をおすすめします。
市販の殺鼠剤だけで解決できますか?
殺鼠剤で個体数が減っても、侵入口が残っていれば再び入り込む可能性があります。また、すでに傷ついた配線や汚染された断熱材はそのままです。生息調査、駆除、清掃、点検、封鎖を組み合わせる必要があります。
まとめ|屋根裏の音を「騒音だけ」と考えない
- げっ歯類の前歯は生涯伸び続け、かじることで長さが保たれる
- 屋根裏の電線は、通り道にあるという理由でかじられ得る
- 被覆が損傷すると、短絡や半断線を経て火災につながるおそれがある
- NITEの集計では、小動物・害虫が関与した製品事故52件を含む78件のうち、約72%が火災に至っている
- 音・臭い・ブレーカーの異常があれば、放置しない
ネズミの追い出しだけでなく、配線の安全確認と侵入口の封鎖まで行い、再発を防ぎましょう。
「音がする」だけで、十分でございます
現地調査・お見積り・出張費は0円。何もいなければ「おりません」と正直にお伝えします。
その場でのご契約は求めません。
参考資料
- NITE(製品評価技術基盤機構)「身近な動物が思わぬ火災事故を引き起こします ~ペットだけでなく、ネズミやゴキブリなどにも気を付けて~」(平成29年8月24日)
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2017fy/prs170824.html - 東京消防庁「火災事例・コード」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/denkaseihin/case05.html - 東京都保健医療局「ねずみ」(東京都ねずみ防除指針/都民のためのねずみ防除読本)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/yomimono/nezukon/nezumi/
東京のネズミ相談件数が2022年から急増している件については、こちらの記事で公的統計をもとに整理しています。
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