害獣プロコラム東京のネズミ

東京のネズミは、世界で「減っていた」数少ない都市でした。──2022年までは

ネズミ2026年8月30日害獣プロ(株式会社T.O.P)
屋根裏の梁の上にいる複数のクマネズミ

「東京でネズミが激増している」という記事をよく見かけます。ただ、東京都が公表している統計と、 東京大学が参加した国際研究を並べると、もう少し込み入った話が見えてきます。 この記事では、伝聞を使わず一次資料の数字だけで整理します。

東京は、世界で数少ない「減っていた」都市だった

2025年1月、東京大学大学院農学生命科学研究科の清川泰志准教授らが参加した研究が、 科学誌 Science Advances に掲載されました。世界16都市について、 7〜17年分のネズミに関する苦情件数を解析したものです。

結果はこうでした。

つまり長期で見ると、東京は世界の大都市のなかで例外的に「減っていた」側でした。 「世界的にネズミが増えている」は正しいのですが、 「だから東京も増えている」とはこの研究からは言えません。

増加の40.7%を説明したのは「気温」だった

同じ研究は、苦情件数の変化を何が説明するのかも調べています。

40.7%平均気温が説明する割合
34.3%緑被率が説明する割合
19.4%人口密度が説明する割合

いっぽう、都市のGDPは3.4%、最低気温は2.3%しか説明していません。平均気温が上がるほど、そして緑地が減るほど、ネズミの苦情が増えるという関係です。研究グループは、緑地の減少については 「気温を上げた結果ではなく、都市構造の変化そのものが苦情を増やした」と分析しています。

希望のある話も含まれています。ニューヨークでは2024年から新しいゴミ出しルールが導入され、 ネズミの苦情件数が減り始めました。 気温は変えられませんが、餌と侵入口は変えられるということです。

ところが、東京では2022年から急に増えています

同じ研究発表の中に、こう書かれています。

一方、東京では2022年からネズミに関する苦情数が急増しています。

これが実際どれくらいなのか、東京都の公式統計で確かめました。 都内の各区市町村と保健所に寄せられた相談件数を、都が毎年集計・公表しているものです。

東京都「ねずみ・衛生害虫等相談状況調査」ネズミ類の相談件数
令和3年度5,954
令和4年度6,399
令和5年度7,726
令和6年度7,714

出典:東京都保健医療局「ねずみ・衛生害虫等相談状況調査結果」各年度。 件数は駆除件数・被害件数・個体発生数とは異なります。

令和3年度の5,954件から、令和5年度は7,726件。2年で約3割(29.8%)増えています。令和6年度も7,714件と、ほぼ同じ高さで止まったままです。

参考までに、10年以上前の平成24年度は7,639件でした。 つまりいったん6,000件割れまで下がったあと、2年で元の水準を超えるところまで戻ったというのが、東京で起きていることです。

数字の読み方について、正直にお伝えします。

この統計は相談件数であって、ネズミの数ではありません。東京都自身が「ある生物の相談件数が増減しても、その生物の発生数が必ずしも増減しているとは限らない」 「マスコミ報道等により、一時的に相談件数が増加する場合がある」と注記しています。「3割増えた」のは相談であって、生息数が3割増えたと証明されたわけではありません。ただ、困って役所に電話した人がそれだけ増えた、という事実は動きません。

相談が増えるのは、秋から冬です

月別の内訳を見ると、はっきりした季節性があります。令和6年度でいちばん多かったのは10月の1,009件で、次が11月の855件、12月の746件でした。 いちばん少ない8月(482件)の2倍以上です。

夏に増えるハチとは逆の動きです。気温が下がると、ネズミは暖かく餌のある場所を探して 建物の中へ入ってきます。屋根裏は、その条件を完全に満たしています。「秋になって急に音がしはじめた」というご相談が増えるのは、これが理由です。

では、なぜ2022年からなのか

東京都の統計は、増えた理由までは説明してくれません。ここから先は、 私たちが現場で見ている範囲での話になります。断定はできませんが、 次の3つが重なっていると考えています。

1. 飲食店が通常営業に戻った

2022年から2023年にかけて、飲食店の営業が本格的に戻りました。 営業が戻れば、出る生ゴミも戻ります。ネズミにとっては餌の量が数年ぶりに回復したことになります。 繁華街で増えた個体が、周辺の住宅地へ広がっていくのは自然な流れです。

2. 繁殖力が、想像を超えている

クマネズミやドブネズミは、妊娠期間がおよそ20日、1回の出産で6〜9匹、 年に5〜6回出産します。生まれた子は生後3か月で繁殖をはじめます。

餌の条件がいったん整うと、個体数は加速度的に増えます。「来月にしよう」と決めた時点で、来月の現場は今月とは別のものになっています。

屋根裏の梁の上に6匹のクマネズミがいる様子

1匹見えた時点で、すでに複数いるとお考えください。

3. 建物の側の条件は、変わっていない

クマネズミは直径2cmの穴を通ります。500円玉(直径2.65cm)より小さい穴です。 配管を通した部分のパテが経年で痩せる、軒天の板が反って数センチの口が開く、 床下の通気口の網が破れる。これらは築年数とともに必ず起きます。

餌が増え、繁殖力が高く、入口が開いている。この3つが揃うと、屋根裏は選ばれます。

いま、自宅で確かめられること

屋根裏を覗かなくても、次のどれかが当てはまれば可能性があります。

音の質でも、ある程度は絞り込めます。細かい音ならネズミ、 人が歩くような重い音ならハクビシンかアライグマ、 直線的に走り抜ける音ならイタチです。 獣種ごとの見分け方は、対応する害獣のページにまとめています。

屋根裏を覗くときは、マスクと手袋を。フンや毛を吸い込まないでください。無理はせず、 写真だけ撮ってお送りいただくほうが安全です。

まとめ

煽るつもりはありません。ただ、「気のせいかも」で数か月置かれた現場ほど、 費用は膨らみます。音がしているなら、確かめるところまでは早いほうがいい、というのが私たちの実感です。

「音がする」だけで、十分でございます

現地調査・お見積り・出張費は0円。何もいなければ「おりません」と正直にお伝えします。
その場でのご契約は求めません。

出典

  1. 東京都保健医療局「ねずみ・衛生害虫等相談状況調査結果」令和3年度・令和4年度・令和5年度・令和6年度
    https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/nezukon.html
  2. 東京大学大学院農学生命科学研究科「地球温暖化は都市にいるネズミを増加させる」(2025年2月4日)
    https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20250204-1.html
  3. Richardson JL ほか「Increasing rat numbers in cities are linked to climate warming, urbanization and human population」Science Advances(2025年1月31日)
    https://doi.org/10.1126/sciadv.ads6782
  4. 東京都福祉保健局 片上香織「東京都における害虫相談の現況について」 (公益社団法人 東京都ペストコントロール協会 会誌)
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