コウモリだけは「駆除」できません
法律と季節に縛られる、たった一つの害獣
屋根裏や戸袋にコウモリが住み着いたとき、ネズミやハクビシンと同じ感覚で 「駆除してもらおう」と考える方が多くいらっしゃいます。ですが、コウモリだけは話がまったく違います。捕まえることも、殺すことも、法律で禁じられています。 できるのは「追い出して、入口を塞ぐ」ことだけ。 しかも、追い出せる時期は1年のうち限られています。
1.ネズミとは、法律上の扱いが正反対です
鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)は、 「鳥獣」を「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義しています。 環境省の解説によると、この概念には平成14年の法改正によりネズミ・モグラ類と海棲哺乳類が含まれることとなりました。
ところが、そこには例外があります。
ただし、鳥獣保護管理法第80条の規定により、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣又は 他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」として、 ニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類、いえねずみ類3種については、鳥獣保護管理法の対象外とされています。
出典:環境省「鳥獣保護管理法の概要」
いえねずみ類3種とは、クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミのことです。つまり——
- ネズミ → 法の対象外。捕獲や駆除に許可は要りません
- コウモリ → 哺乳類の野生動物そのもの。法の対象です
同じ「屋根裏に住み着く小動物」でも、法律上の立場は逆なのです。
許可なく捕まえれば、罰則があります
自治体はこう案内しています。
野生のコウモリは、鳥獣の保護および管理ならびに狩猟の適正化に関する法律により 捕獲・殺傷が禁止されており、違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
出典:つくばみらい市「コウモリを見かけたら」(2025年8月26日更新)
「家に入ってきたから」「フンで困っているから」という理由は、捕獲を正当化しません。
自治体も駆除はしてくれません
市内でもコウモリの姿が見られますが、元々日本に生息している自然の生きものであるため、 市では駆除や捕獲等を行っておりません。(中略)追い払いや侵入予防策は、御自身または業者などで対応していただくようお願いします。 ※費用は自己負担となります。
出典:つくばみらい市
外来種であるアライグマやハクビシンとは、ここが大きく異なります。コウモリは在来種であり、保護の対象なのです。
2.家に入るのは、ほぼ1種類だけ
日本には約35種のコウモリが生息していますが、 住宅に入り込むのはほぼ一種に限られます。アブラコウモリ、別名イエコウモリです。
日本に生息しているコウモリの中で唯一住家を住み家としています。 そのためイエコウモリ(家蝙蝠)の別名があります。
出典:前橋市「コウモリについて 市街地にも姿を現します」(令和4年3月作成)
洞窟でも森でもなく、人間の建物を選んで暮らすコウモリが、 日本には1種類だけいる。それが家に入ってくる正体です。
| 体長 | 3〜5cm |
|---|---|
| 頭胴長 | 40〜60mm |
| 前腕長 | 30〜35mm |
| 体重 | 5〜10g(成獣) |
| 繁殖期・出産期 | 繁殖期10月/出産期は初夏(7月頃)、1回に2〜3頭 |
| 活動期間 | 春〜秋(夕暮れ)。冬は冬眠(11月頃〜4月頃) |
| 食べ物 | 昆虫(カ・ユスリカ・ヨコバイ)など、一日(夜)に300〜500匹捕食 |
| 生息場所 | 屋根裏、戸袋、換気口、軒下、瓦の下、高架下、倉庫内など |
出典:前橋市(令和4年3月作成)
体重5〜10g。単三電池1本(約23g)の半分もありません。 この軽さと薄さが、わずかな隙間に入り込める理由です。
なお前橋市は、コウモリが一晩に300〜500匹の虫を食べるとも記載しています。 蚊やユスリカを大量に食べる生きものでもある、という事実は押さえておいてよいと思います。
3.どこから入るのか
前橋市は、侵入ポイントとして次の4つを挙げています。
- 窓やドアの隙間
- 換気口や通気(風)口
- エアコンと室外機を繋ぐ配管用の隙間
- 屋根と壁の隙間
住み着く場所としては、屋根裏、戸袋、換気口、軒下、瓦の下が挙げられています。
「何cmの隙間から入るか」について、正直にお伝えします。インターネット上では「1cmの隙間から入る」「2cmから入る」と書かれていますが、数字が資料によって割れています。私どもが確認した範囲では、公的機関の資料にこの数値の記載は見当たりませんでした。 確実に言えるのは、頭胴長40〜60mm・体重5〜10gという実測された体の大きさと、 上に挙げた実際の侵入箇所です。 「何cm以下なら安全」と考えるより、箇所を一つずつ見ていくほうが確実です。 数値の一人歩きは、かえって見落としを生みます。
4.対策できる時期は、1年の半分しかありません
ここがコウモリ対策の、最も知られていない部分です。北九州市は、こう明記しています。
なお、冬眠時期及び夏の出産時期は追い出しが難しいため、 それ以外の時期に対策を行う方が効果的です。
出典:北九州市「よくある相談と対策【コウモリ】」(2025年7月11日更新)
前橋市のデータと重ねると、こうなります。
| 時期 | 状態 | 対策 |
|---|---|---|
| 11月頃〜4月頃 | 冬眠 | 追い出しが難しい |
| 5月〜6月 | 活動期 | 対策に適した時期 |
| 7月頃〜夏 | 出産・哺育 | 追い出しが難しい |
| 9月〜10月 | 活動期 | 対策に適した時期 |
作成:前橋市の生態データ(冬眠11月頃〜4月頃、出産期7月頃)と、 北九州市の案内を突き合わせたもの。
動かせるのは、実質5〜6月と9〜10月です。
なぜ出産期に塞いではいけないのか
飛べない子が、屋根裏に取り残されます
親は外に出られず、子は自力で出られません。 結果として建物の中で死に、腐敗臭とハエの発生、そして解体を伴う清掃という、 はるかに大きな問題に変わります。「見かけなくなったから塞いだ」が、いちばん危険な判断です。
5.フンを自分で片づける前に
コウモリのフンは、乾いて崩れやすく、粉になって舞い上がります。 掃除機で吸う、ほうきで掃くという作業は、粉じんを空気中に広げることになります。
野生のコウモリには、寄生虫や感染症の原因となる菌やウイルスが付着している恐れがあるため、素手で触らないようにしましょう。
出典:つくばみらい市
感染症については、前橋市が慎重な書き方をしています。
国内ではコウモリを直接的な原因として発症した事例は現在のところありませんが、 海外ではフンに含まれる「カビ菌」を吸い込んで病気に感染したケースが報告されています。
出典:前橋市
過度に恐れる必要はありません。国内での発症例は確認されていないという点は、正確にお伝えしておきます。 ただし海外での報告がある以上、粉じんを吸い込む状況をわざわざ作る理由もありません。 清掃の際は、使い捨ての手袋とマスクを着用し、 乾いたフンを舞い上げないよう湿らせてから回収してください。
6.正しい順序は「追い出す → 確認する → 塞ぐ」
自治体が案内している手順は、どこもほぼ共通しています。
手順1 追い出す
火を使わないタイプの燻煙剤、ナフタリン等の固形忌避剤、 スプレータイプの忌避剤などを使います。 前橋市はコウモリの嫌うものとして光、ハッカ、トウガラシを挙げています。 燻煙剤を使う場合は、火災報知器が反応しないようご注意ください。
手順2 いないことを確認する
ここを飛ばしてはいけません。夕暮れに飛び出す姿が見えなくなったか、複数日にわたって確認します。
手順3 塞ぐ
- 換気口や通気口の外蓋に破損等がないか確認し、必要によっては交換する
- すき間をパテやシーリング材などでふさぐ
- 金網や目の細かい防鳥ネットなどで覆う
出典:前橋市
高所の作業は、ご自身で行わないでください
コウモリが入るのは軒下、屋根と壁の取り合い、戸袋といった高い場所です。 自治体も、こう付け加えています。
※高所である場合には危険ですので、専門業者への依頼についてもご検討ください。
出典:つくばみらい市
転落や踏み抜きの危険があります。無理をなさらないでください。
よくある質問
家に入ってきたコウモリを捕まえて逃がしてもいいですか?
捕獲は鳥獣保護管理法で禁じられています。部屋に入ってきた場合は、窓やドアを開けて自然に出ていくのを待ってください。前橋市も対処法として「自然に出ていくのを待つ」「窓やドアを開けて放つ」を挙げています。寄生虫や菌が付着しているおそれがあるため、素手では触らないでください。
自治体に駆除を頼めますか?
多くの自治体は、コウモリの駆除や捕獲を行っていません。在来の野生動物であり、保護の対象だからです。追い払いと侵入防止は、住んでいる方ご自身か業者が行うことになり、費用は自己負担となります。
いつ対策するのがいいですか?
冬眠期(11月頃〜4月頃)と夏の出産期を避けた時期です。実質的には5〜6月と9〜10月が適しています。北九州市も「冬眠時期及び夏の出産時期は追い出しが難しいため、それ以外の時期に対策を行う方が効果的です」と案内しています。
まとめ
- コウモリは鳥獣保護管理法の対象。許可のない捕獲・殺傷は禁止(ネズミは法の対象外で、扱いが正反対)
- 住宅に入るのはアブラコウモリ。日本で唯一、住家をねぐらにする種
- 体重5〜10g。換気口、戸袋、エアコンの配管まわり、 屋根と壁の取り合いから入る
- 冬眠期と出産期は追い出せない。対策に適するのは5〜6月と9〜10月
- 出産期に塞ぐと、飛べない子を閉じ込めることになる
- 「追い出す → いないことを確認する → 塞ぐ」の順序を守る
コウモリ対策は、駆除のスピードを競うものではありません。法律と、コウモリのカレンダーに合わせて動くこと。それが結果として、いちばん早く確実に終わる方法です。
時期の見極めから、ご相談ください
現地調査・お見積り・出張費は0円。今が動ける時期かどうかも含めて、正直にお伝えします。
その場でのご契約は求めません。
参考資料
- 環境省「鳥獣保護管理法の概要」
https://www.env.go.jp/nature/choju/law/law1-1.html - 前橋市「コウモリについて 市街地にも姿を現します」(令和4年3月作成)
https://www.city.maebashi.gunma.jp/soshiki/noseibu/nosei/oshirase/32402.html - つくばみらい市「コウモリを見かけたら」(2025年8月26日更新)
https://www.city.tsukubamirai.lg.jp/jyumin/gomi-kankyou-doubutsu/pet/page006934.html - 北九州市「よくある相談と対策【コウモリ】」(2025年7月11日更新)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/27500013.html - 東京都環境局「野生鳥獣との接し方について」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/birds/faq
同じ屋根裏でも、法の対象外であるネズミの話はこちらの記事で整理しています。
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